運動は、加齢による脳機能への影響を遅延させるとともに、鋭い認知能力を維持させ、認知症様疾患の予防となることが、先ごろニューオリンズで開催の米国心理学会(APA)で発表された米イリノイ大学(イリノイ州)の研究で明らかになった。
同研究の著者は「過去40年の研究をレビュー(再検討)した結果、加齢が原因の認知機能や脳機能の好ましくない変化が、身体運動や有酸素運動によって減少し、脳の可塑性(ある機能の衰えを他の機能が補う脳の能力)の維持にもつながることが明らかになった」と報告した。
65 歳以上の男女を対象に行った複数の研究では、少なくとも1日15~30分の運動を週3回行う人は、たとえアルツハイマー病の遺伝的傾向があっても、罹患の 可能性が低いことが示されていた。また、62~70歳の人を対象に、運動と脳機能の関連性を調査した研究では、仕事を続けている人や、退職後も運動をして いる人は、退職後運動をしない人に比較して、脳の血流レベルが維持できており、全般的な認知能力においても良い結果が得られていることが認められた。さらに、ウォーキングを行う高齢者ではストレッチや筋肉運動を行う高齢者に比べ、気を散らす現象に惑わされないことが明らかになった。著者らは「有酸素運動 を行った高齢者は、集中力に関与する脳部位の神経活動が上昇し、行動的葛藤に敏感な部位の活動が低下していた」と述べている。